2.『発達障害のある子と家族のためのサポートBOOK』の概要と要約
本書は4つの章から構成されています。
- 発達障害の基礎知識
- 子育てのコツとヒント(生活編・友達編・学校編・学習編)
- 家族自身のケア
- これからのためにできること
発達障害に対して全く知識がない方から、ある程度知っているという方まで、それぞれに学びが得られる著書になっているように感じました。
中でも今回は、私が教員という立場から「これは大切!」と注目した点をピックアップしてお伝えしようと思います。
1.発達障害の基礎知識
本書では、まず大前提として「発達障害は脳機能の偏りが原因であり、しつけや子育ての問題ではない」と述べています。脳の個性が他の子どもと比べると強く、日常生活に困難がある場合を発達障害と呼びます。
発達障害の例として、以下の5つが挙げられています。
- 自閉症スペクトラム障害→対人関係、コミュニケーションに難しさを感じやすい。こだわりが強い。
- アスペルガー症候群→自閉症の一種。対人関係に苦手意識はあるが、知的な遅れは見られない。
- ADHD→注意散漫、衝動的、多動性。自分で分かっていても、抑制できない。否定に敏感で、褒めに鈍感。
- 学習障害→知的な遅れはないものの、読字、書字、算数などが苦手。できるのに怠けていると思われがち。
- 発達性強調運動障害→手先が不器用。運動が苦手。
これらの障害にはそれぞれ特性(中核症状)があり、子どもたち自身も苦しみを抱えながら過ごしている場合が多いです。しかし、本人の特性が理解されないことにより周りから受ける叱責、非難、いじめ、孤独から二時障害が引き起こされることがあります。それにより、鬱・不登校・反抗的な態度・暴力などの行動が現れるようです。
2.子育てのコツとヒント
では、そのような問題行動やうまくいかないことが出てきた時、一体どうすればいいのでしょうか。ここでは、具体的な事例が、22ケースも紹介されています。ここでは、私が学校でよく見かけるケースに対する対応を2つご紹介します。
周りから見ると、なぜそんなに怒っているのかわからないことでも、必ず理由があります。急な予定変更があったのかもしれないし、勝負に負けて気持ちを整理できないのかもしれません。
このようなお子さんは、興奮している時に何を言っても逆効果で、「怒られた」「何も分かってくれない」となる恐れがあります。人のいない落ち着いた空間に移動し、ハサミや食器など、投げたら危ないものなどを本人から遠ざけておきます。あらかじめ、クールダウンの場所を相談して決めておくのも良いでしょう。
何が原因でパニックを起こしていたのかを聞き出します。答えられないお子さんは、ひとつずつ聞いて頷いてもらうのでも良いでしょう。原因が分かったら「〇〇が嫌だったんだね」と共感を示します。その上で、「次こんなことがあったら、△△するようにしようね」と教えましょう。「次あったらどうすれば良いと思う?」と聞いてみるのも良いかもしれません。
子どもによって集中できない理由はさまざまです。興味がない場合もあれば、できないと思い込んでいる、周りの音に敏感で気が散ってしまうなど、たくさんの理由が考えられると思います。その子が何に困っているかを観察し、個々にあった支援を行うと効果的です。
・音や目に見えるものの刺激を減らす。
・人が気になる子は、最前列にする。
・ノートが取れない子は、手元で見える資料を用意する。
・文字でわからない子は、イラストや写真を見せる。
これらの支援は、支援が必要な子だけでなく、全ての子どもにとってプラスになる支援ばかりです。ユニバーサル教育を意識して、どの子もストレスなく学習に取り組みやすい環境に近付いていけると良いですよね。
3.家族自身のケア
子育ての中で、ご両親が疲れてしまったり、悩んでしまい辛くなってしまうこともあるでしょう。そんなときの対処法の一つとして、ストレスマネジメントプログラムというものがあるそうです。
これは、自分のストレスがどのような時に強く感じるのか、逆に、どんな時はとても穏やかな気持ちでいられるのかを考えることで、原因を突き止め、そのアプローチ方法を考えるというものです。
本書では、ストレスは大きく分けて三つだと述べられていました。
- 自分自身のこと:理想と現実のギャップ、自分を責めてしまう、時間がないなど。
- 対人関係:子どもが言う事を聞かない、保護者や先生などとうまくいかないなど
- 環境:住環境、新しい環境への変化など
他にも、プラスシナリオ転換や、行動分類、ちょこっとチャットゲームなど、ストレスマネジメントプログラムには、色々なメニューがあるそうです。自治体や子育て支援団体が活動していることもあるので、検索して探して、参加してみるのも良いのではないでしょうか。
4.これからのためにできること
私はペアレントトレーニングに取り組んでみたいと思いました。これはざっくり言うと
①子どもの行動を観察する。→問題行動を引き起こす外的要因を探す。
例)気をそらすおもちゃが周りにないか。周りが物で溢れかえっていないか。
②好ましい行動が取れるように、大人の行動や環境を変える。→子どもを変えるのではない。
例)気が散るものをなくす。「◯分までに宿題」などのルールを決める。短くても守れたら褒めたり、小さなご褒美があったりして、好ましい行動を価値づけしていく。
こちらも自治体や子育て支援団体によっては開催しているところがあるそうです。具合的な取り組み方を本で調べてみたり、実際に活動に参加してみたいと思いました。
5.まとめ
1 発達障害は、脳の障害であって、しつけの問題ではない。障害自体の問題もあるが、それに伴う周りからの非難、不理解、叱責により本人も苦しみ、二次障害を引き起こすケースが多い。
2 子どもによって苦しむ場面はさまざま。かんしゃくを起こしてしまう子どもには、
- 気持ちを落ち着かせる時間を取る。
- 落ち着いてから、何にかんしゃくを起こしてしまうのか原因を突き止める。
- 望ましい行動を落ち着いてから確認する。また、環境や大人の行動を変えて、子どもがストレスを感じなくても良いようにする。
3 本人だけでなく、家族もストレスを溜め込まないのが大切。自分がストレスを感じる、感じない場面はどんなときなのかを知り、それに近づく行動を考える。ストレスマネジメントプログラムに参加してみる。
4 こどもを観察し、原因を突き止め、それに対してアプローチしていくペアレントトレーニングというものがある。
きっとこれからも困った子どもの姿に何度も直面するでしょう。そんな時に、子どもや自分を責めることなく、冷静に対応していきたいと思いました。原因を分析するには、感情的になってはいけない。平常心を保てるように心がけながら、長い目で、コツコツアプローチしていき、少しの成長を共に喜べる大人でありたいと思いました。
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